地方で「伝える」力を活かす映像制作会社の9年目

会社について

2024年の今年、弊社は設立9年目を迎えました。

9年前、当社は福岡から佐賀への移住とともにスタート。当時、福岡市はスタートアップ支援に力を入れており、私はその制度を活用しながら会社を立ち上げました。

その頃はプライベートでは結婚したばかりで、仕事では契約社員として福岡の映像制作会社で働きながらNHKの番組制作に携わっていた時。そんな中で将来の働き方や生き方に迷いを抱えていた私に、佐賀で仕事をしないかと声をかけてくれた方がいて、それが移住と会社設立のきっかけとなったのです。

「地方で暮らし、地方の価値を映像で伝える仕事がしたい」

福岡では九州や沖縄の生活情報番組に携わり、トレンド情報やグルメといった都市型のテーマが多かった一方で、地方の生活や課題に焦点を当てる機会が限られていました。佐賀には親戚がいるため訪れることはあったものの、生活基盤を築く地縁はありません。

しかし、映像制作を生業とする一人として地方で活動できるなら、新しい視点から「伝える」仕事にチャレンジできる機会になると感じていました。そんな私の背中を押ししてくれたのは前年の映像技術のニュースと、ある人からの助言でした。

2014年、世間では「4Kテレビ元年」と呼ばれ、デジタルハイビジョンの4倍の高画質を提供する4Kテレビの導入が進められていました。4K画質の一般化で高画質の映像がクリアに視聴者に伝わるよう時代が到する兆しが見えた年です。一般のカメラにも4k撮影が可能なものが発売され出していたため、映像の企画・構成の専門職であるディレクターとしての経験を積んできた私にとっては、その経験と知見を形に出来る環境が整ってきた時期でもありました。

その時、思い出したのはかつてある地方の写真の展覧会でゲストとして訪れていた小説家の方の言葉です。その小説家の女性とはひょんなことから親しくなり、一緒に食事をしながら話をする機会もありました。その時、彼女はふと「社会課題は支援が少ない地方にこそ見えてくる」という言葉を口にしました。普段、東京など関東で活動する彼女は、この時のように出張で地方に訪れる度にそのようなことを考えるというのです。その言葉を聞いた時、私は彼女が見ている地方の姿を想像しました。おそらく東京と比較しての地方の状況。少子高齢化や過疎化といった言葉が、リアルな姿として現れた、その瞬間を。

 そうやって重なった様々な出来事が、私に地方における映像制作の意味や意義、そして地方にある価値を映像という形で発信していきたい、という気持ちの礎になったのでした。

地方の現実と商店街の衰退

佐賀で生活を始めた当初、私は県内の商店街を紹介する番組制作を担当しました。番組は、アナウンサーが地方の商店街を旅し、その魅力を紹介するというもの。しかし、実際に商店街を訪れるとシャッター通りが目立ち、活気の衰えが浮き彫りになっていました。地元の方々に話を聞くと、大型商業施設の進出や、日用品の買い物客が大型スーパーに流れてしまったことで、商店街への足が遠のく原因になっていると知りました。

さらに商店街では店舗兼住居が多く、店を閉じても元店主が住み続けるために新しいテナントが入りづらいことが衰退に拍車をかけているそうでした。これは全国的に多くの商店街が抱える共通の問題であり、地方経済の厳しい現状を実感させられるものでした。

1960年代以降、郊外の大型店舗の進出やモータリゼーションの進展、さらに1980年代の日米貿易摩擦をきっかけに大規模小売店舗法が緩和され、地方の商店街の衰退は加速しました。2008年のリーマンショックや、東日本大震災といった災害、さらにはコロナ禍も影響し、多くの商店が廃業に追い込まれています。

しかし、そのような中でも、取材を進めると長年の常連客を大切に商売を続けている方々にも出会うことができました。常連客の女性と結婚し、酒屋を続ける店主や、過疎化の進む小さな島で唯一の商店を営む男性など、時代に流されず懸命に生きる姿に触れたことは、私の映像制作に対する考え方に深い影響を与えました。

 それは「大説」として語られる時代背景の中にあって、「小説」としての個人の物語として、確かにそこにあり、その事実は映像で記録し、伝えるべき価値のあるものだと気づかされたのです。彼らの情熱や信念を高画質の映像で記録し、視聴者に届けられる仕事ができたとことは、マスコミ以外からも映像制作の依頼を受けるようになった今も、私の大切な財産となっています。

会社の使命とこれからの展望

あれから9年が経ち、今年、新たにホームページを立ち上げ、会社の存在意義を改めて見つめ直しました。これまで、私たちはマスメディアの番組制作を通じて、地方の視点から情報を発信してきましたが、近年は特に地方から発信するコンテンツの重要性を感じています。マスメディアの役割は、地域性や時代性をふまえたコンテンツを発信することですが、私たちは「地方を映像で伝える」という使命を担い、事業者や自治体、地域の団体が持つ価値を見える形で伝えていくことに重きを置くようになりました。

地方に根ざした映像制作には、都会にはない独自の価値があります。地域の人々の視点や感情を理解し、彼らの想いや生活の一部を切り取りながら映像として発信することで、視聴者に共感を呼び起こすことができるのです。特にインターネットやSNSが普及し、情報発信の方法が多様化した現代において、地域の魅力や課題を正確に伝えることはより一層重要な役割となっています。

地方発信の意義と私たちの役割

今後も、地方での経験を活かしながら、地域の実情を映像で表現し、視聴者にその魅力や課題を伝えることで、地方に新しい風を吹き込む手助けをしていきたいと考えています。地域に密着し、地域の声を拾い上げることで、映像制作が単なる情報提供にとどまらず、地方活性化の一助となることを目指します。

例えば、地方の商店街で長年営業を続けている店主の思いや、地域の伝統を守り続ける若者たちの姿を映像に収めることで、地域社会の魅力やその課題を伝えるだけでなく、次の世代へとその価値を引き継いでいけるのではないかと考えています。映像が持つ力で地域を照らし、新たな視点で地方の魅力を再発見し、発信する。その役割を果たしていくことが、当社の目指すべき方向性です。

地方にはまだまだ多くの可能性が眠っており、私たちはその可能性を映像を通じて引き出していきたいと思います。地域の方々とともに歩み、地方に根ざした視点から、地方の未来を見据えた映像制作を続けていくことが、私たちの誇りであり使命です。

これからも皆様と一緒に、地方の価値を伝えるお仕事に取り組んでいければと思っています。

よろしくお願いします。