―はじめての企業映像づくり、一緒に考えてみませんか?(6)
「クオリティは高いのに、なぜか刺さらない動画がある」
これは、私が何度も見てきた現実です。
照明もきれい、編集もプロ仕様、音楽もスタイリッシュ。
それなのに、“見た人の心”には残らない。
逆に、スマホで撮ったような画質でも、
「その動画を見て会社に応募しました」と反響を呼んだ例もあります。
では、いったい何が違うのか?
今回は、「うまくつくること」と「伝えること」の違いについて、一緒に考えてみたいと思います。
■ 「うまい動画」は技術の集合体
「伝わる動画」は“目的の翻訳”
“うまい動画”とは、こう言えるかもしれません。
- 撮影技術が高い
- 編集がなめらかでテンポがよい
- 映像と音楽がしっかりシンクロしている
- ナレーションが心地よい
もちろん、どれも素晴らしい技術です。
でも、それだけでは**“目的のある映像”にはなりません**。
“伝わる動画”とは、「見る人の心に、何かしらの変化を起こす映像」です。
- 「ここに問い合わせてみよう」
- 「この会社、信頼できそうだな」
- 「この人たちと働いてみたい」
つまり、行動や感情の“スイッチ”を押す動画。
そのためには、技術ではなく「何をどう伝えるか」の設計が必要なのです。
■ きれいなだけの動画が“何も伝わらない”理由
過去に、ある企業の紹介映像を見せてもらったときのこと。
画はきれいで、ドローンも使われ、音楽も感動的。
でも見終わったあと、私はこう思いました。
「で、何がすごいの?」
よくよく話を聞いてみると、その会社のいちばんの強みは、
「小ロットでも柔軟に対応する体制」と「現場の人間力」だったんです。
それなのに映像では、高性能な機械や会社の外観ばかりが映っていて、
“本当に伝えるべきこと”が画面に出てこない。
これでは、「うまくつくったけど、伝えたいことが伝わらない動画」になってしまいます。
■ “プロっぽさ”を捨てる勇気
私がときどきお客様に提案するのは、
**「あえて力を抜いた映像の方が、伝わる場合もありますよ」**ということです。
たとえば:
- カメラに慣れていない社員の、ちょっと噛みながらのインタビュー
- オフィスでの日常風景に、小さな笑い声が入っているカット
- あいさつの途中で、社員が思わず笑ってしまうワンシーン
こういう“素の瞬間”には、人の温度がある。
見る側が「この会社、なんだか好きだな」と思えるのは、むしろこういう部分だったりします。
もちろん、すべての映像にそうした手法が合うわけではありません。
でも、“完璧”よりも“親近感”を重視したほうが刺さる場合は、少なくないのです。
■ 演出の正解は、“視聴者の感情に寄り添っているかどうか”
映像は一方的に発信するメディアに見えて、
本質は**「見る人と対話する手段」**です。
だからこそ、
「この映像を見ている人は、どんな悩みを持っているだろう?」
「どんな言葉を聞いたら、前向きな気持ちになれるだろう?」
という発想が欠かせません。
企業がよく陥るのは、“自分たちの都合”だけでつくってしまうこと。
- 自慢したい技術
- 表面的な成果
- 無難なメッセージ
そうではなくて、**視聴者の立場から見た「本当に知りたいこと」「感じたいこと」**を想像する。
それが、構成や演出の「正解」を決める大事な視点です。
■ 実例:ある団体の“伝わる動画”
私が担当した、ある教育プログラムに取り組む団体の事例をご紹介します。
当初は「研修予定があるので、そのプロゴラムの魅力を密着して撮影し、ドローン映像などを加えて、インパクトのある㏚映像を」と希望されていました。
でも、実際に話を伺うと、そのイベントの魅力は
- 参加者が研修現場で土地の文化を肌で感じながら、学びを行うこと。
- 地域の人たちとの交流を通して、小さな、しかし、血の通った“気づき”を重ねていること
- 参加者同士が互いの学びについて議論し、内容を建設的に発展させ、未来につなげていること
でした。
そこで私は、ドローン撮影と研修をただ撮影するのみではなく、
「現場の二日を追う密着風の映像」と「それぞれの研修プログラムの意味を踏まえた撮影」、「参加者インタビュー中心」の構成を提案。
結果、その動画は参加者の肌感覚が表現された説得力のあるものとなり、
教育プログラムの認知拡大につながったとのことでした。
https://www.spf.org/pioneerschool/news/20240908_OEC2024-report.html
(公財)笹川平和財団 海洋政策研究所様 【ディレクター(企画構成)株式会社ひぐちワールド:撮影・編集(株式会社テラビット)】
**「派手ではない。でも、見た人に“信頼感”を与える映像」**だったからこそ、
本来の目的に合った“伝わる動画”になったのだと思います。
■ 結論:あなたの会社にしかない「言葉」を、映像で届けよう
いまは、映像の技術が誰でも使える時代です。
でも、“何をどう伝えるか”は、まだまだ職人技の領域です。
「うまく見せること」より、「本質をどう見せるか」
「正しく説明する」より、「相手の心に届くこと」
それが、これからの企業映像に求められる視点ではないでしょうか。
まとめ
- 映像は「うまくつくること」と「伝えること」は別物
- 技術よりも、視聴者の感情に寄り添うことが重要
- “素の言葉”“日常の表情”にこそ、信頼感が宿る
- 会社の“伝えたいこと”より“伝わること”を優先しよう
次回予告
次回は「撮ったあとが本番? 動画の“届け方”を考える」と題して、
完成した動画をどう活用すれば、より多くの人に届き、目的を果たすことができるのか?
Webサイト・SNS・採用ページなど、「動画の使い方」についての考え方をご紹介します。
